夜咄Sahan

カクテルの“点前”から

お茶というだけで敬遠してしまう方は、お酒だけでも、料理だけでも、カクテル だけでも夜咄Sahanの空間を楽しむことができます。

お茶もカクテルも海外からもたらされた飲料でありながら、日本人の独特のこだわりによって、その作り方を追求していった日本独自の進化を辿っており、その味だけではなく、お客様の目の前で飲み物を作る過程“点前”をも鑑賞ポイントとしています。また、バーの世界でも師匠によってシェーカーの振り方や氷の削り方が違い、“流派”を形成しています。

市中の山居である茶室空間で、茶道具などにまつわるオリジナルカクテルの話を通じて、日本文化に興味を持って頂ければ幸いです。

遅櫻(おそざくら)

カシスとレモンのさっぱりした味わいと、薄茶の薫りの調和したロングカクテル です。 茶入「遅櫻」は、足利義政が有名な天下三肩衝の一つ「初花」よりも素 晴らしいとして、金葉集の和歌から名付けました。

夏山の青葉まじりの遅桜初花よりもめづらしきかな

薄茶だけでも美味しいですが、夏らしい酸味のあるカシスとレモンの清涼感漂う カクテルとなって、更にその「めづらしさ」をお楽しみ下さい。

黄昏ノ月(こうこんのつき)

マリエンホーフ社の菫(すみれ)リキュールを使ったSahanオリジナルマテ ィーニです。
気品ある高貴な香りをまとった大人の味わいに、一休禅師の漢詩より「黄昏(こ うこん)ノ月」と名付けました。

雪真珠(ゆきしんじゅ)

「雪真珠」は大徳寺真珠菴で丹念に作られた唐納豆を使ったカクテルです。真珠菴の庵号は、日本臨済宗の祖の一人となった楊岐方会(992―1049)が雪の夜に楊岐山の破れ寺で修業をしてる時、障子もない部屋の中へ雪が舞い込んできて床一面に積もり、月明りに照らされて真珠のように輝いている、という情景を詠んだ漢詩「楊岐乍住屋壁疎、満床皆敷雪真珠」にちなんで一休が名付けたと言われています。 この「雪真珠」の名を冠したカクテルは、一休が大徳寺に伝えたという唐納豆の個性的な香りと強い塩味を活かすために、ズブロッカに唐納豆を漬け込みカクテルベーススピリッツとしました。桜の香りがすると言われるズブロッカを選んだのは一休の「花は桜木、人は武士、柱は檜、魚は鯛、小袖は紅葉、花は美吉野」からの連想です。 また、「ゼンザイ」の語源が、餅の入った小豆汁を食べた一休の「善哉此汁」の言葉であるという故事から、小豆リキュールを使用し、相性の良い牛乳としっかりとシェイクすることにより、甘味の中に仄かに大徳寺納豆の香りが加わり、複雑な拡がり生み出しています。 仕上げに、細かくすりおろした唐納豆を少量浮かべ、甘い液体と共に塩味を口に含むことの驚きと面白さを演出しました。 白い水面に浮かぶシェイクの氷と散らされた唐納豆を雪真珠の景色にも見立てています。

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