夜咄Sahan

夜咄Sahanとは

“茶道”というと、点前や行儀作法のイメージが強いですが、本来は、友人を招いて懐石料理や酒を酌み交わし、美術品を鑑賞する“茶事”をするのが“茶の湯”の楽しさです。茶道を経験したことがない人を茶事に招くと、皆さん「予想していたのと違う」「楽しかった」と仰って頂けるのですが、再び体験したいと思ってもどこに行って良いかわからない、とのお話しも耳にしました。そんな“茶の湯”の楽しさを体験してもらえる場を作りたい、との思いから、この夜咄Sahanを考えました。茶事を楽しむ上で、一番皆さんが苦労する、正座をしなくても良い立礼式で、尚且つ、侘茶の雰囲気をもっとも味わえる“小間”の茶室を考案しました。

お茶というだけで敬遠してしまう方は、まずは茶室の空間でお酒だけでも、料理だけでも、カクテルだけでも楽しめ、お茶に興味が出てきたら、正式な茶事も体験できます。

茶事の楽しさがわかってきたら、今度は友人を連れてきて、茶道の点前ができなくても友人に茶事を語ることもできます。道具に興味が出てきたら、自分のコレクションを持って来て友人に自慢することもできます。点前にも興味が出てきたら、自分で点前をして亭主役をすることもできます。既に茶道を習っている人も、流儀のお茶とは違って、作法を気にせず楽しい所だけをSahanで楽しむことができます。

そして、Sahanのもう一つのコンセプトは、茶道とバーという二つの日本らしい文化を同じ空間で体験できるということです。抹茶もカクテルも海外からもたらされた飲料でありながら、日本人の独特のこだわりによって、その作り方を追求していった日本独自の進化を辿っており、その味だけではなく、お客様の目の前で飲み物を作る過程“点前”をも鑑賞ポイントとしています。また、バーの世界でも師匠によってシェーカーの振り方や氷の削り方が違い、“流派”を形成しています。その空間も、茶室は“市中の山居”と言われ、街中にある山奥のような異世界を演出していますが、バーも同じく、オフィス街の中にありながら、重い扉を開けると日常と違った世界を演出しています。客もまた、一方的にサービスを受けるのではなく、亭主と客が他のお客様にもお互いに気を遣いあいながら良い空間を作っていく、というのも日本らしい“もてなし”と思います。

“日常茶飯事”と言われるほど、お茶や飯は日常のものでしたが、今はなかなか日常から離れた存在になりつつあります。夜咄Sahanが茶道やカクテルを通じて、さまざまな日本文化の楽しさに触れ、友人と語り合う場となってくれることを願っております。 より多くの方にご利用頂きたいと思いつつ、狭い空間のため、現在はご紹介制とさせて頂いておりますが、表参道にて二号店の企画も考えておりますので、是非皆様に日本文化を楽しんで頂ければ幸いです。

寒鴉齋 宇田川 宗光

©夜咄Sahan